BioShockおわたー。インヴェントリ・呼出をtabキーに設定しルッキング・グラス・テクノロジーズの伝統を味わいつつ、ワイド・スクリーン・表示と銘打たれた上下トリミング表示を設定し狭いFOVに酔いながら一気に終わらせたのであった。FPSの特性を活用したストーリー・テリングウルティマアンダーワールドから脈々と継がれた内容であってそう新しいスタイルでもないが、初出から15年後に器を新しくして売り方を変えたことに意義があるのだろう。
もちろん大絶賛する姿勢を崩す気はないけれども、先にがっかりした点を記しておく。特筆すべきがっかりはストーリー上最も重要な中盤の会話だ。ゲーム内容やヴィジュアルのインモラルっぷり、もってまわった言いまわしの頻発するダイアローグから解釈して、こりゃサディストをマゾヒズムに目覚めさせる講義かと期待して聞いていたところ、のちの展開やネタバレ・インタヴューで語られるメタ性を合わせて『まかいとうし サ・ガ』の「かみは しんだ」と同様のメッセージであった点だ。あ、アレのコンプレックスを強制するアレは新しいかもしれないが、アレを言うとネタバレある。足が腫れてる人ね。あと英語圏ではストーリーを評価する声が多い点について、英語圏といってもほとんど北米の評判を基にしていることは注意である。アメちゃん特有の、全ての人間へチャンスを与える思想に毒されている限り拒絶できない内容が「かみは しんだ」後から始まっていることが不自然な高評価の元凶であるように思われる。日本語圏でもインターネットの普及によりそこかしこで見受けられるようになった思想であるけれども、これに従ってシナリオを評価する姿勢が洋ゲーサイトーさんに表出していないことから推測するに、未だ日本人はこの宗教的な熱狂に毒されていないようで胸を撫でおろすものである。このようにアメちゃんにオプティマイズされているうえ、ゲーム内で語られるメッセージは古いんじゃジャパニーズ・ゲーマーに受けないわなあ。とりあえずストーリー的に見るべきところはないが、サウンド・トラック収録のテーマ曲に感涙するんだよな、臭すぎて。DNAと有性生殖は海で生まれたんすよ、とでも言いたげな『The Ocean on His Shoulders』の副題も臭いし。あとカンカン・パッケージのカンカンっぽくなさはいかがなものか。Quake3のLANパーティで貰った限定版カンカン・パッケージのようなものを期待していたら、DVDのトール・ケースの外箱をカンカンで置き変えたような、ちょっと見コーティング紙のようなもので装丁されたパッケージが届いたのである。うーん
さて、よかった探しをするまでもなく怒涛のように精神へ流れ込むゲームの愉しみについて記していきたい。まず死体。地面のフリクションに比べてラグドールの関節が緩いせいか、仰向けになった死体は片手を上げた姿勢で地面に転がり、カリフォルニア在住17歳女子大生による「しこって寝ろよ ばいばーい」のセリフを嵌めたくなるような手の振り方をする。アンリアル・テクノロジーを使ったゲームでは首や足首でよく見られる現象だが、物理エンジンとして使われているHavokの特性なのかしら。とりあえず、全身黒コゲになっても「ばいばーい」と手を振りつづける健気な死体は良い感じだ。
あと両手を高く挙げて指を組んだ男性のモティーフ、はアール・デコ様式でも見たことなし、というわけでThiefに捧げているのか。手先が翼になっているモティーフなんてメカニストん家の軒先に飾ってある彫像そのまんまじゃん。あとポリゴン・モデルのメッシュ描画の際、視線と法線の内積が大きいほど紫味を強くする表現は俺の好物であるブーグローの人物画を思い出させる。光やフレアに暖色系統を多く使っていることを考えると、生体の生きっぷりを逆色で示しているのか。あとインタヴューで語られていた予定通りにナチス・ゲームとなっておれば、コーエンちゃんによるコンテンポラリー・アートの開陳もそれを嫌忌するヒットラーちゃんとからめて味わい深くなったのであろ。あとかわいいものを殺すより、それをかわいがっているものを殺すほうが心が痛む。あと舞台設定の大部分を紹介するヴォイス・レコーダーや日記において、日付や時刻で語られる情報を全てスポイルした点は退化だ。ログ・確認画面に集まったレコーダーを見返しながらカタストロフの時系列を構築する愉しみを失っているのは口惜しいこと限りない。あとGears of Warは出んの? ナムコ子会社製作の元ネタでお茶を濁す毎日には飽き飽きだ。もちろん、デモ版を1時間やって飽きたので毎日は遊んでいない。