手にしてから15年、全国津々浦々を共に旅してきたcote d'azulと書いたるナイロンのボストン・バッグに入った年季は相当なものだ。YKKはすでに剥がれ落ち、ショルダー・スリングもとうに亡失した現実がそこに在る。ちなみに購入当時の値段は1800円である。今の貨幣価値に直すとだいたい1800円なので、年季も1800円相当であるように考えられる。
ほんで、そこまで年季が入ると知らんあいだにバッグへ混入するグッヅは無視できない数となるのであった。今回の場合、その存在すら忘れていたユーテイリティ・ポケットのYKKを開けたらば見覚えのない粉薬が大量に押収されたのである。そのうちで大勢を占める無垢のプラスティック・袋に包まれた粉粒の由来は推して知るべしだが、そこで少ないながらも文字の印刷されたアルミニウム・コーテッド・袋を発見した。
大書されたラテン文字はMUND、それにドイツ語の羅列。ムントといえばムンテラのムンであり、つまり経口薬であることを主張しているようだ。ところでムンテラと聞くと咄嗟にクレスタと続けたくなる。つまりムンクレスタ、テラクレスタ、そのテッラだったのか! あとムンテラという単語は医療従事者らしい頭の悪さに満ちていて大好きである。
ほんで子細に観察してみれば、www.mund-pflegedienst.de Wilhelmshoher Allee 345 34131 Kassel なるアドレスも併記してあった。トナルト何かのついででドクメンタをご訪覧あそばされた折に何処からか入手した薬物であると推察される。
それにしても薬効は何々だ。P-カゼも同時にポッケから押収されたところをみると風邪薬に相違ないように思わるるけれども、それにしても効かないぞP-カゼ。