ゴム長の野望

かねてよりラバー底の摩耗に疑問を抱いていた。他人の靴は均等に削れるところ、自分の靴だけ踵の外側から削れるのだ。通常、このような振舞いをみせる摩耗現象はO脚によるものと説明されており、骨格に由来するとして定義される。しかしながら自省してみれば勿論O脚などではないため、能動的な動作に由来することは明らかである。
そこで、自らのウォーキング・スタイルを顧みると足刀部で着地、つまりトーインで着地していることに気付く。そのままソール全面を引き摺りながら大地に降り立ったあと逆側の脚を振り出す運動へ移行するが、振り出す感覚は裸足と同一の界面を基に小脳は判断しているようだ。すると、皮膚より出っぱったソール部分は地面に擦りつけられる。この現象に注目すると、引き摺った際に最もストレスのかかる箇所は最も分厚い踵部だ。ということは摺り足に由来していたのか! 上半身が平行移動していて気持ち悪いと定評のあるウォーキング・スタイルは丹田と摺り足を中心とした重心移動トレーニングの賜物であるが、すでに死にスキルだよキミそれは。
あと格闘動画で達人が保護されているように見えるのは、演武で師範代に敵意をもって掛かると無駄に痛い目を見るためだ。コメントに頻出する合気道っぽい動きとは、掛手が敵意のなさをアッピールすることに伴った動きを指しているのであろ。
ところで冒頭の痛い目とは肉体的な痛みを指し乍ら、社会的な痛い目という意味も含んでいる。つまり、社会的な痛い目を避ける動き自体が達人を保護する動きに繋がっているとも言える。武道好きの言う戦わずに勝つスキルとは、誰に痛い目を見せるか選ぶスキルだよキミそれは。
とりあえず受講者に倒れた人を助け起こさせ、わざと不自然な手の貸し方を指示することで人間の重心の取り方と関節の可動範囲を体感させる方法はいいなあ。